予防歯科、メインテナンス

 板東歯科医院南昭和オフィスは、アメリカテキサス州ヒューストンのUT health(テキサス大学ヒューストン校歯学部)とperio health professionalsによる世界最先端とも言える予防歯科診療の研修を修了しました。この施設は元AAP(米国歯周病学会)会長で歯周病治療と予防歯科の世界的権威であるDr. Michael K. McGuireのオフィスです。他にもDr. E. Todd ScheyerやDr. David I. Liptonといった有名な歯科医師が勤務されています。

 当院では2004年の開院以来皆様のお口の病気の再発を第一に考えメインテナンスをおこなってまいりましたが、厚生労働省経済産業省からの通達により健康な方に対するメインテナンスは健康保険で行うことが不可能となり、健康保険で行うことのできるメインテナンスはSPT(歯周病安定期治療)のみとなりました。健康保険は疾患を持つ方に対するもので、病気でない方には用いることができないという理由です。

 そのため当院でもメインテナンスを「自費メインテナンス」と「SPT」の2種類に分けさせていただき、できる限り長くメインテナンスを続けていただけるよう善処していくことにいたしました。現在SPT受診中の方はそのまま変更はありません。

 保険適用には様々な決まりがあるため皆様のご希望に添いかねる場合もございますが、皆様におかれましてもご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

経済産業省。歯科医師がう蝕、歯周病にり患していないと判断したものに対する予防メインテナンスが療養の給付に含まれないことが明確化されました。
メインテナンストSPTの違い
予防歯科(メインテナンス)とは? ヘルスプロモーションに基づいた「お口のリスク管理」です!

 みなさまは治療が終わったあと、また虫歯や歯周病になり、歯科医院で治療を受けた経験はありませんか?もしそういう経験があるなら、それは定期的な検診や予防処置がきちんといかされていないのかもしれませんし、予防歯科の重要性がお分かりの方でも、ご自分のお口のリスク(虫歯や歯周病のなりやすさ)を知らなければ、予防しようがありませんよね。

 当院で行っているメインテナンス(予防歯科)では、「ご自分のリスクを分かっていただいたうえでご自分でケアを行っていただき、歯科スタッフは専門的立場からそのお手伝いを積極的に行う。」というヘルスプロモーションの概念に沿って、私たちお口の専門家が、歯科医院で定期的に皆さんのお口のケアを行います。

 そして科学的にみなさまのお口のリスクを「検査、管理、予防」することにより、そういった治療終了後の病気の再発を予防していくことがとても重要なのです。

ヘルスプロモーションとは?

 ヘルスプロモーションとは、WHO(世界保健機関)が1986年のオタワ憲章において提唱した新しい健康観に基づく21世紀の健康戦略で、「人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし、改善することができるようにするプロセス」と定義されています。「すべての人びとがあらゆる生活舞台-労働・学習・余暇そして愛の場-で健康を享受することのできる公正な社会の創造」を健康づくり戦略の目標としています。

 すなわち健康は皆様自らが作るものであり、私たち医療スタッフは「縁の下の力持ち」的なサポートを行うことが求められています。

どうして虫歯や歯周病は再発するの?

 治療終了後のお口の中は、非常に清潔な状態になっています。しかし無菌状態かというと、そうではありません。日常の予防としてはハミガキが一般的ですが、人には必ずクセがあるため、どうしてもみがき残しができてしまいます。そういったところに細菌が集まってくると、重なり合ってバイオフィルムという層を作ります。

 このバイオフィルムをハミガキできれいにすることはとても難しく、そこから虫歯や歯周病が新しくできてしまうのです。

メインテナンスの方法
メインテナンスの種類
~お口のリスク検査~  
口腔内の検査 現在のお口の状態をチェックし、ご説明いたします。
唾液検査 唾液の性状やカリエスリスク(虫歯のなりやすさ)などのテストを行います。
細菌検査と除菌 位相差顕微鏡、リアルタイムPCR法を用いてお口の中の細菌検査を行い、必要なら除菌いたします。
~お口のリスク管理~  
歯石除去(スケーリング) 超音波歯石除去器具を用いて、できるだけ無痛で、歯にこびりついた歯石を除去し、PMTCの効果が最大に生かされるようにいたします。
ブラッシング指導(TBI) お口の効果的な清掃方法について、ご説明いたします。要点を絞ってわかりやすくお伝えできるよう努力しています。
歯のクリーニング(PMTC) 歯科衛生士が器具とフッ素ペーストを用いて歯のクリーニングを行います。スウェーデンのペール・アクセルソン博士とブリギッタ・ニーストレン女史による科学的根拠に基づいた方法を採用しています。
歯ぐきのクリーニング アロマ配合のジェルやクリーナーを用いて歯ぐきのマッサージを行い、血流を良くすることで強い歯ぐきになります。
舌のクリーニング ハーブ配合のジェルやクリーナーを用いて、汚れの付きやすい舌をクリーニングします。
~お口のリスク予防~  
フッ素塗布 、3DS 虫歯になりやすい方は、フッ素を塗布したり、抗菌療法により予防していきます。

以上の中から、個人個人に合わせた予防プログラムを組み、お口の管理を行ってまいります。

どのくらいの間隔で行えばいいの?

 予防処置ですから、お口の環境が悪くなる前に定期的に行っていくことにより、健康なお口の状態を保つことができます。あまり知られていないのですが、実は初期の虫歯は痛みを感じませんし、歯周病も歯が揺れてくるまで気づかないことが多いのです。ですから、痛みが出たり、歯が揺れたりして歯科医院に訪れると、予想以上に治療期間がかかることはよくあります。

 そのため当院では治療終了後、3ヶ月ごとのメインテナンスをおすすめし、リスクの少ない方は間隔も少しずつ長くしながら、皆様のご負担が少なくなるように進めていきます。

メインテナンスは受けたほうがいいの?

 虫歯や歯周病は気がついたときには、削ったり抜いたりしなくてはならないことが多く、また口臭、顎関節症、ストレスなどの原因にもなります。

 そういったことを予防するためにも、今まで治療にかかっていた費用や時間をメインテナンスにまわすと考えてみてください。大きく削ったり、抜いたりする必要がなくなり、一生健康な自分の歯で過ごすことが可能になります。なにより、ご自分のお口のリスクを知ることは、予防歯科を進める上で欠かすことができません。

 できるだけ時間や費用の面でみなさまのご負担を軽くし、虫歯や歯周病からお口を守り、健康を維持することがメインテナンスの最大の目的なのです。

メインテナンスはだれが行うの?

 メインテナンスは予防処置のため、ケースにより(治療が必要な場合など)、歯科医師が行うこともありますが、通常歯科衛生士が行います。当院のスタッフは、皆様のお口の管理を責任もって行えるよう、ポストグラデュエイトの講習会、研修会に参加することにより、口腔衛生のプロフェッショナルとしての教育を受け続けています。

 また3ヶ月に1度というと大変な感じもしますが、治療が必要になってしまうと、小さな治療でもどうしてもそれ以上に回数は必要になってしまいます。北欧など予防歯科先進国と呼ばれる国々(8020運動達成国)では、自分の健康管理について正しい知識を持ち、お口の健康を保つために歯科医院を上手に利用することは常識となっています。

 私たちも皆様の生涯のお口の健康管理について、安心してお任せいただけるよう努力してまいります。

8020運動ってなに?

 「80歳になったとき20本の歯が残っているようにしよう!」という運動を「8020運動」といいます。これは単に20本の歯が残ればいい、というわけではなく、健康な歯を20本残そうというものです。それは物をおいしく食べ、人間として楽しく過ごすには、「20本」の歯が必要といわれているからです。しかし日本の現状は、8007、つまり80歳の方で、残っている歯の本数は、平均して「7本」だといわれています。これは日本のメインテナンス率の低さから来る、という研究者もいます。事実メインテナンス率がほぼ100%の予防歯科先進国である北欧の国々では、8020運動はすでに達成されているのです。

 以上のことは、メインテナンスの重要性を示すだけでなく、これから高齢社会となる日本の進むべき方向までも示している、といえるのではないでしょうか?